45年くらい前、そう私が小学2年生。
寒い冬だったと記憶してる。
一戸建てに住み、二階に自分の部屋を与えられていた私は、朝母に起こしてもらう習慣がなく、いつも自然に目覚めて階下に降りていくと言うのが日常だった。遅刻はしたことがない。
その日も普段と同じように階段を降りていった。
昨夜、父は夜勤なのでいなくてあたりまえ。
けど、あたりまえにいるはずの母がいない。
カーテンも開けられず部屋は薄暗かった。朝食の用意もされてなくてテーブル上にあったクリーミーパウダーに魔法瓶の冷めた湯を注いで飲んだ。喉につかえたものを感じながら家を出た。鍵は持たせてもらっていなかったので鍵をかけずにそのままで。学校に着くとそんなことは忘れていつも通りに過ごした。
学校から帰ってきてからの記憶はない。
数日何が起きたのか理解できないでいた。それでも学校は休まず通っていたと思う。
母がいなくなってしばらく、父の夜勤の時には父方の親戚のおばさんや母方の祖父母が泊まりに来てくれていた。それもしだいになくなり、父と二人の生活に慣れたものの朝を迎えるまでの時間はとても長く不安だった。
専門分野では有名な病院に勤務の父と、料理が得意で何でもこなす専業主婦の母との間に生まれた一人っ子の私。何不自由なく暮らしてた生活に大きな変化が起きた。
母の家出によって。