母は認知症とパーキンソン病で、もう一人では外出は厳しい状態だ。
若い頃から活動的で好き放題生きてきた母にとっては歯がゆい気持ちであろうと思う。
今では外出はデイサービスと病院だけだ。
デイサービスの送迎車の中から同世代の人の健康的な行動を見ていると自分が情けなく思えてくるとこぼす。
入会していた宗教のことすらも言わなくなった。
そこで、主人が遠出は無理でも近場で負担なく、少しでも日常から離れさせてあげることはできるはずと一泊温泉に連れていってくれた。
近畿圏和歌山の田舎だ。
「八風の湯」
母の足元が頼りないので支えながら一緒に入った温泉は、私は楽しむと言うより介助で疲れた。
でも、日頃感情に乏しい母がニコッと笑って気持ちいいと言ってくれるだけで、連れてきて良かったと思う。
夕食にも満足してくれたようだ。
翌日は高野山にお参りした。
過去に占い宗教や団体に傾倒していた母の心の中には信仰心と言うものはまだ残っているのだろうと思って行ってみた。
母の足では地下にある奥の院まで厳しいかと思ったが、杖をつきつき、ゆっくりゆっくり歩いてお参りできた。
母は「ありがとう」と一言。涙が一筋流れていた。
行って良かった。
また行こうね。