住まいは実家から車で約10分のところ。
正直なところ近すぎて怖かった。
けれど子供たちとの距離をあけるのは不安でできなかったし、何よりその部屋は校長先生(現夫)が借りようとしていた部屋だった。
その時点で現夫には妻子がいて、子供はそれぞれ独立、妻とは20年程前から家庭内別居で離婚の話が出ていたそうで、とりあえず妻の顔も見たくなくて借りようとしていた部屋と言うことだ。私に譲ってくれた形。
普段から明るく笑っていたので、そんな内情があるとは思いもしなかった。
でも、このことは私にとってはありがたかった。
車も借りた。このことは夫にも話してあった。
無料で借りるわけにはいかない!と夫が認めなかったので、それももちろん私の給料から支払っていた。別居中一円も夫には出してもらっていない。
仕事の帰りに家に寄れるときは寄っていた。
母は私の顔を見ても知らんぷり。
「あら、来てるの」くらい。
私がPTAや会で飛び回っているときには結託していた夫と母が険悪になってきた。
ある日、夫から母についての不満メールが来た。
母に確認すると「いちいちうるさい!」と切れられた。
そんな日々が続いて私は家へ立ち寄らなくなった。
「別居してまだわずかなのに約束を反古するのですか?」
「美味しい豆腐を買ってきました。取りに来ませんか?」
「体調が悪いのでそちらで食べてください」と返信すると
「誰かが横で行くなと言ってるのですか?」
「誰かと高級料理は食べに行けても安物な豆腐は取りに来れないと言うことですか?」
私の居どころは知らないはずなのに「川沿いの小さな鯉のぼりがいっぱい見えますね。可愛いですね。」
確かに部屋の窓を開けると、たくさんの鯉のぼりが見える。
怖い!